トップ精工 宇宙への挑戦
PROJECT MEMBER
蒲生 潤
取締役 営業部 部長
2014年入社 龍谷大学卒
小野 元太
生産技術加工課 課長
2012年入社 東海大学卒
PROJECT STORY
- Q.プロジェクトの始まりについて教えて下さい。
アメリカのお客様が、とある日本の光学ガラスメーカーの素材に興味を持っていたので、私がその企業様にコンタクトしたところから始まりました。
その件で打ち合わせを重ねているうちに、弊社の加工技術を評価して頂き、別のプロジェクトのお話を頂くことが出来ました。それが、人工衛星で使うガラスを削ってほしいという相談でした。通常、ガラスというものは温度によって大きくなったり小さくなったりします。
今回の人工衛星で使う特殊なガラスは、どんな温度でもサイズが変わらないという特徴を持っていました。宇宙空間だと極端に高い温度もあれば低い温度もあるので、その環境に耐えるガラスということになります。このガラスの加工が成功することによって、今までとは比べ物にならない程小さいサイズの人工衛星を作ることが出来ます。
人工衛星は1回の打ち上げに莫大な費用が掛かりますが、小型化することによって、同じ費用でも複数回打ち上げることが可能になり、大幅なコスト削減が可能となります。
こうして、弊社とお客様の一大プロジェクトが始動しました。
- Q.実際に加工をスタートしてみて、いかがでしたか。
素材の大元のガラスは削った経験があるのですが、今回はその素材にいろんな成分が混ざっていました。どの企業にも情報はなく、教科書もない為、私達も未経験のところからのスタートでした。
削りやすいのか、削りにくいのかすら分かりませんでしたが、何事も試さないと始まらないので、まずは削ってみました。優しく削るとどうなるか、強く削るとどうなるか、ガラスの反応を確認しました。
極端に強く削ると火が出たので、そういったことも社内で共有し、素材を知るところから始まっていきました。初めに任せて頂いた加工は小さいものだったのですが、加工が上手くいくとサイズが大きくなっていきました。大きくなれば難易度も上がりますし、材料としての価格も高くなります。
お客様としては、どのくらいのサイズまで対応できるのか試していたんだと思います。- Q.加工するうえで、特に苦労したポイントを教えて下さい。
スタートした時は全然順調にいかなくて、削ったらガラスの一部が欠けてしまいました。何度も考えて試してもやはりかけてしまう。途中までは欠けることを前提に加工をしていました。
難易度の高いところは後に考え、先に9割の加工が上手くできるところまで仕上げました。最後にこの一部が欠けている状態をどうするか解決するために集中しました。欠けてしまう部分というのは鋭利な形になっていて、ちょっとした衝撃ですぐに折れてしまう状態でした。宇宙空間では何があるか分からないので、9割の状態ではさすがに納品できません。
まずは削ってもかけない方法を模索しないといけないので、素材を一番理解されているお客様のところに行って素材について勉強させて頂きました。何度もお伺いする中で、素材の特徴が少しずつ理解できてきました。
また、費用のプレッシャーも大きかったです。
人工衛星に使用する用途なので、如何に軽く、かつ強度を維持できるかが条件となります。その為に、大きな素材から形を削りだすという手法をとっていました。削る量はとても多く、素材の70～80％を削っていました。言い換えれば、70～80％を破棄するということですが、特殊ガラスは非常に高額です。決まった予算もあるので、何度も失敗は許されませんでした。工具も、沢山削ると摩耗していきます。
今回は弊社の歴史上でも最長の、一か月以上の加工でしたから、正直、工具の耐久がどのくらいもつのかも分かりませんでした。途中で失敗すると、また一からになってしまう為、常に工具の心配をしながら、毎朝、正常に稼働しているか確認していました。こういった経験やお客様からの情報のおかげさまで、何度も試行錯誤をしながら加工条件を探し、欠けない方法を見つけることが出来ました。
- Q.納品されたときのお客様の反応はいかがでしたか。
電話で一報をいただいて
「すごく加工が綺麗ですね。プレッシャーが掛かる案件だったと思いますが、対応いただきありがとうございました」
という言葉をいただけました。お客様にとっても、非常に大事な製品なので、運ぶためにチャーター便を用意されていました。全てがはじめてで貴重な体験でした。
後日、加工した特殊ガラスが使われた人工衛星が実際に飛んでいると聞きましたが、私達の加工品が宇宙にあると思うと感慨深いものがあります。
弊社の歴史の中でも費用も加工品も一番大きな案件だったので、希望通り納品できたことは、会社としても1段レベルアップ出来、自信に繋がりました。
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